日本生物物理学会第35回年会, 1997年10月, 京都

拡張アンサンブル法によるタンパク質分子の熱力学量の解析

升屋正人, Ulrich H. E. Hansmann, 岡本祐幸

要旨:われわれは最小エネルギー状態に到達するシミュレーションの方法として、徐冷モンテカルロ法(Monte Carlo Simulated Annealing)および拡張アンサンブル法(Generalized-Ensemble Algorithm)を適用することを提唱してきた。分子内部の自由度は膨大なため、系にエネルギー極小状態が無数に存在し、ネイティブ構造(最小エネルギー状態)への到達が難しい。しかし、これらの方法を用いることにより現実的な時間で最小エネルギー状態に到達できることがすでに示されている。とりわけ拡張アンサンブル法はエネルギー空間内をランダムウォークすることにより、1回のシミュレーションで最小エネルギー状態を含むさまざまな構造を得ることが可能である。このため、エネルギー最小状態の探索ばかりでなく、任意の温度におけるポテンシャルエネルギーや比熱などの熱力学量を算出できるという特長を持つ。本研究ではこの利点を利用してさまざまな熱力学量を求め、タンパク質分子の熱力学量の解析を行った。従来のシミュレーションによる熱力学量の計算は格子モデルなど簡略化した系を用いるものがほとんどであるのに対し、本方法は全原子モデルを使うことで、より現実に近い系でのシミュレーションとなっている。さらに、数値的な表面積の高速計算アルゴリズムと表面積を用いた近似的な水和自由エネルギー計算法により、従来のシミュレーションでは計算時間が増大するため不可能であった溶媒の効果を明示的に取り入れることに成功した。また、体積についても数値的なアルゴリズムを用いて高速に算出すると共に、最小エネルギー構造と任意の構造のオーバーラップの計算をシミュレーションに導入し、タンパク質分子のフォールディングの熱力学量を評価した。これにより、フォールディングに関わる2つの転移温度を求めることができた。Met-enkephalin(残基数:5)とHuman Parathyroid Hormone Fragment(残基数:37)に対してシミュレーションを行なった結果を報告する。

mho9710.txt · 最終更新: 2009/09/29 21:42 (外部編集)
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