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日本生物物理学会第34回年会, 1996年11月, つくば

水和エネルギーを考慮したタンパク質分子の立体構造予測

升屋正人, 光武亜代理, Ulrich H. E. Hansmann, 岡本祐幸

要旨:計算機によるタンパク質の立体構造予測は、二つの理由から困難なものとされてきた。一つは分子内部の自由度が膨大なことである。これにより、系にエネルギー極小状態が無数に存在し、ネイティブ構造(最小エネルギー状態)への到達が難しくなる。もう一つは溶媒の効果の見積もりが困難なことである。タンパク質は水やイオンを含む溶液中に存在しているため、溶媒の効果は無視することはできない。しかし、その効果をどのように見積もるかは複雑な問題であり、また計算時間が長くなるためシミュレーションへの導入は難しい。これまで、われわれは最小エネルギー状態に到達するシミュレーションの方法として、徐冷モンテカルロ法(Monte Carlo Simulated Annealing)およびマルチカノニカル法 (Multicanonical Algorithm)を適用することを提唱してきた。これらの方法を用いることにより、現実的な時間で最小エネルギー状態に到達できることがすでに示されている。しかし、これまでの研究では溶媒の効果を誘電率として暗に取り入れているに過ぎず、水和のエネルギーを計算しているわけではなかった。そこで、われわれはタンパク質分子の表面積を分子団ごとに計算することにより、溶媒の効果を考慮したモンテカルロシミュレーションを行った。水和のエネルギーは、熱測定実験によるパラメータを用いて計算する。これまで行われている表面積の計算には解析的なものと数値的なものの2つがある。前者は複数の球の交点と交面を求め、幾何学的に表面積を求めるものである。この方法では正確な表面積を求めることができるが、計算時間がかかる、結果が不定になる場合がある、といった問題が存在する。後者は球の表面に点を分布させ、点の数を数えることにより表面積を求める方法である。この方法では近似的にしか表面積を求めることができないが、分布させる点を多くすることで精度のよい近似が可能である。また、解析的な方法にくらべて高速に計算を行うことができる。これらの方法を比較検討するとともに、新しい表面積計算方法を提唱し、立体構造予測を行った結果を報告する。